ウオオオオーーーーー!!!
敵味方の怒号が渦巻く中、船首へと走る。
途中、次々と向かってくる敵の水兵をなんとか凌ぎようやく船首へと到達した。
船首上甲板から船尾楼の指揮所を睨む・・・いた・・・ブライアン・ラガルド。
俺と同じくカサドールジュストコールに身を包み、上甲板中央の戦況を見下ろしている。
その時、ふとラガルドが視線を上げて・・・目が合った。
その瞳に今どんな色が浮かんでいるのか・・・この距離では見ることは出来ない。
「船尾楼へ行くぞ、決着をつける」俺はそう言うと上甲板から砲列甲板へ降りる階段へと足を進めた。
上甲板より敵の数は少ないに違いない。
だが・・・その期待は階段を降りた所で打ち砕かれた。
あちこちで響く撃剣の音・・・砲列甲板も上甲板と同じく修羅場と化していた。
となると砲列甲板のさらにその下・・・漕艪甲板はどうか・・・。
砲列甲板から漕艪甲板へと階段を降りる。
思った通り、漕艪甲板は上甲板や砲列甲板に比べると兵の数は明らかに少ない。
「行くぞ」俺はピエールとバルバストル艦長にそういうと、注意を引かないように右舷側をゆっくりと進んだ。
しかしそれも中央付近まで。手空きとなった敵の一団が目ざとく気づくと前を遮った。
「カサドールジュストコール!?敵の提督か!」頭らしい男が提督と知って驚く。
しかしすぐに闘志をむき出しにして叫んだ。
「ここに敵の提督がいるぞ!殺れ~~!!!」
その声に呼応して男が引き連れていた5人の兵がシミターを手に向かって来る。
俺は近くの既に事切れていた水兵に、突き刺さっていたシミターを引き抜くと二刀に構えた。
「提督を守れ~~!!!」
男の声に味方の水兵も反応し、漕艪甲板は俺を中心に渦を巻いたような状態となった。
「提督、お気をつけて!」ピエールの声に肯くと俺は向かってくる2人のシミターを、剣で受け止めると弾き上げ瞬時に斬り捨てた。
だが敵は途切れることなく向かってくる。次に向かって来た二人を同じように斬り捨ててさらに次の二人を凌ぐとさすがに腕が重くなって来た。
しかしその時・・・急に敵兵が引き出した。
ピエールとバルバストル艦長を相手に戦っていた敵も闘いを放り出して大慌てで逃げて行く。
味方の水兵たちがその後を走って追いかける。
「大丈夫か?」そう言ってピエールを振り返る。
「僕は・・・大丈夫ですが艦長が・・・」ピエールが荒い息をしながら言うのを聞いてバルバストル艦長を見ると
バルバストル艦長の左肩が切り裂かれ赤黒い傷口からは血が滴り落ちていた。
「大丈夫ですか?」バルバストル艦長に声をかける。
バルバストル艦長は脂汗が浮かんだ青白い顔を俺に向けると左肩を押さえながら苦しそうに肯いた。
「誰か、バルバストル艦長を船医に!」俺は味方の水兵にそう叫ぶとバルバストル艦長に肩を貸す。
「大丈夫・・・まだ行ける・・・」バルバストル艦長は首を俺に向けて苦悶の表情を浮かべてそう言った。
「駄目です、艦長のお気持ちは分かりますが・・・ここまでです!」俺が強い口調でそう言うと艦長は
「私は・・・見届けなければならない・・・それが・・・私の最後の役目だ・・・」とぎれとぎれにそう呟く。
「あなたに最後の役目があるとすれば・・・それは艦を守ること・・・それが艦長としてのあなたの役目です!」
バルバストル艦長の言葉に俺は力強い口調でそう告げた。
「わかった・・・だが・・・私の選択が・・・間違いでなかったことを・・・必ずや・・・証明して下さいますな?」
そう言って差し出したバルバストル艦長の右手を俺は両手で握り締めると、深く肯いた。
「艦長こちらへ!」そう言うと、水兵の一人が俺に代わってバルバストル艦長に肩を貸し、もう一人が右手を持ってバルバストル艦長を船首方向へと連れて行った。
「ピエール?」
「はい・・・まだ行けます」俺の声にピエールはそう答え肯く。その時
「提督!」斬り込み頭が走ってきて俺を呼んだ。
「敵は漕艪甲板から撤退、船尾の階段を封鎖して船尾楼周辺に兵力を集中させています!」
「分かった、全水兵を漕艪甲板から上へ順に上げて敵を掃討後、上甲板船尾に集中させろ!」
「分かりました!」
斬り込み頭が水兵を引き連れて、立ち去っていく後姿を見ながら俺はピエールに向かって叫んだ。
「行くぞ!」
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